包丁の話

三浦の包丁の研ぎ方を書きます。

1.使用砥石
2.研ぐという事、切れない状態とは?
3. 未熟者!!と実感させられる。
4. ハサミ研ぎ
5. 研ぎとは言わないよね

 

1.使用砥石

私が使う砥石は、
荒砥は、GC、あらとくん、刃の黒幕320、等です。金剛砂や荒目80番等も使います。

刃の欠け、小さな刃こぼれ、刃線直しなど包丁の形修正などで、研磨力が必要な時に使います。
コンディションの良い包丁の場合は、すり減ることを防止するため使わないこともあります。


中砥は、キング1000、刃の黒幕1000、刃の黒幕1500、刃の黒幕2000、等です。

刃付けのベースを作るために使います。
この時点で、ある程度の切れ味が出来上がります。


仕上げ砥は、ナニワ響3000,刃の黒幕5000、キングS-1、G-1、刃の黒幕12000、丸尾山白巣板、等です。

2.研ぐという事、切れない状態とは?

研ぐというのは、
故障しているものを修理する事に近いと持っています。

よく聞かれることに、「何回くらい砥石でこすれば切れるようになるの?」
砥石で研ぐと切れるようになるのは間違いではありませんが
闇雲に擦ったところで切れるようになるというものではないのです。

修理しないと!切れるように!

両刃の包丁を雑に説明すると
刃先を研いで、先端が鋭利になるまでにしなくてはなりません。
そのため多くの人が説明しているように
「かえり」「バリ」が出るまで研いでください。
図にするとこんな感じ。

 

頑張って研いで、かえりが出ると刃先が鋭くなります。
かえりを優しく取りながら、反対側も研ぎます。

ここまでくれば切れるかと思いきや。。。
切れない原因は、これだけではありません。
刃線が乱れていたり、刃こぼれというのがあります。

こんな状態。
刃がへっこんでいるところや、こぼれているところは砥石が当たらないので、かえりも出てきません。
切先(包丁の先端)~刃元(手に一番近いあごの部分)全てが砥石に綺麗にあたって、かえりが出ると全体が図で示したように刃がつくので切れるようになるというわけです。
これをすべて手で研ぐのは大変です。手で研ぐのは失敗が少なくできる利点はありますが、結構な時間がかかります。回転砥石などのグラインダーを使うと時間は短縮できますが、いっきに削るので、包丁の摩耗も激しく寿命は短くなりがちです。

ご存知の方も多いと思いますが、
包丁研ぎの基本は「包丁を研ぐ前に砥石をまっすぐに修正してから」です。
スケボー競技場のようなハーフパイプの形にえぐれた砥石では
自分の思ったような角度に研げなし、
刃線の乱れにもつながります(上の包丁の図の1枚目のような形になりがち)。

 

3. 未熟者!!と実感させられる。

ここまで書いてきたような理屈で包丁を研いでいきます。自分では上手く研げている、理屈通りに仕上がっていると思っていても、そうではないことがあります。
最後に簡易顕微鏡やルーペで確認するとわかります。

左が簡易顕微鏡60倍~120倍ズーム
右が拡大鏡60倍

違いは、顕微鏡は左右、上下が反転するので、刃先を連続してチェックするには難しい。
いつもは、右側の60倍の拡大鏡でチェックしています。
その画像が下の写真

お分かりいただけるでしょうか?
ほんの少し、刃にこぼれが残っています。

もう一度やり直しです。
この時に自分の未熟さを感じます。

うまくできていると思ってしまっている自分に。

この拡大鏡でのチェックが必要なくなった時に、
ちょっとは上手になったと言えるのかもしれません。
まだまだ道のりは遠いようですね。
頑張ります。

4. ハサミ研ぎ

ハサミ研ぎもします。


最近どっぷりはまっているのが、鋏研ぎ。
30年以上美容師やっていますが、自分で鋏研ごうなんてあまり考えませんでした。

メーカに、調整を兼ねて研ぎ依頼をするか、
飛び込み営業で来る「研ぎ師」的な人に頼むことが多かったです。

あまり良い出会いがなかったのか、
切れ味が驚くほど蘇った!という経験はなかった。
数回研ぎに出して、諦めて新しい鋏を買う。の繰り返し。

美容、理容の鋏って、10万越えするの結構ざらなんですよ。
なのでこの出費は結構つらい。
なのに自分で研ごうとは思わなかった。

だって本職がやってダメなんだから、
自分でやってうまくいくはずがない!と。

ところがはまって、やってみたら

あら不思議。結構うまくできることが多い。
こんなことならもっと早くやればよかった。

包丁と違って、研いだだけでは切れるようにはならないのです。
刃元から切先まで、寸分狂わず咬み合わせがあっていないといけないのです。

研ぎの精度もシビアです。
なので刃付けの角度が一定になるように設定できる器具があったりします。

手動 大熊式鋏研ぎ器

トギラークⅢ

スーパーウェルⅡ

球アール本舗 スーパー研磨機

ダブルグラインダー水研ぎ

スカンスリブ水研ぎ

この機械たちはとても便利なのですが、
鋏には、裏梳きやソリや捻りといった複雑な形があります。
どれ一つとっても直線はないのです。
これを理解せずに機械に頼るとどうしても切先に力強さがなくなります。
何十年も研ぎに携わっている方々の職人技の凄いことに気づかされます。

 

 

 

5.研ぎとは言わないよね

ハサミ研ぎの特訓をしているのですが、古道具屋が出品しているヤフオクで入手したり、仲良しさんに頼んでお家の裁ちばさみをお借りして研いでいます。


名前を聞いたことはあるという方も多いかもしれません。
東鋏 庄三郎 280mm 大きめの鋏です。購入したまんまの状態。
切れ味はそんなに悪くありません、流石「庄三郎」
しかし全体に錆が出ています。裁鋏は、鋼(はがね)
なので錆びやすいです。

中まで、錆びています。
これを時間をかけて磨いていきます。

片方で一時間以上磨いています。
勿論、研ぎも調整も全くしていない状態です。

研ぎと調整が終わりました。
何時間かかったかは、ご想像にお任せします。
研ぎが職業になり辛いのがよく分かります。

しかし刃物にとって研ぎの重要性もよく分かりました。