不躾
2022年2月7日月曜日
お店をお休みにした。
久しぶりの休みだ。
お店を休みにしたのには訳がある。
近所の理美容室へ鋏研ぎの飛び込み営業をしようと考えていたからだ。
リモートワークでオフィス街の理美容院は閑古鳥
住宅街のそれは落ち込みが限定的だと考えたゆえの行動。
住まいのある北赤羽~赤羽が今回のターゲット
平日の昼過ぎあたり
あまり忙しくはないであろう時間帯を狙って。
少しでも迷惑にならないよう訪問するため
休む必要があった。
お店のプリンターで何部か刷ったチラシを持って。。。
相手のお店の前で
わざとらしく自前のアルコールで消毒してからの訪問
月曜日であるから、理容室はお休みが多い。
自然美容室メインになる。
50歳を過ぎて、
同じ業界の自分よりも若いであろう人への飛び込みの営業。。。
メンタルしっかりしないと凹んで立ち上がれなくなるかも。。。
そんな中、割と近いところに1200円カット
ダメでモトモト
飛び込んでみる
「こんにちは~鋏研ぎなんですがご用命ありませんか?」
返事はあるものの人の気配が。。。ない。
しばらくするとご自身の事を「おじさん」という店主現れる。
「鋏研ぎ?」
「美容師なの?」
「なんでこんなことやってんの?」
「何処から来たの」
「美容室は自分の店?」
「規模は?」
「家賃は?」
割と不躾な質問の連打
まずは一通り嘘の無いようにお答えして。。。
不躾
いやいや不躾なのは、私の方
アポなしに突撃して
「仕事任せてくれ!」と頼んでいる。
それにしてもこの「おじさん(自称)」嫌な感じがまったくしない。
「たいへんだなぁ」
「ガンバレよ!」
「試しに2本頼むか!?」
「お試しに1本は無料にさせていただきます」の私の声を遮り
「それじゃあ、商売になんねぇだろうが!!」
「しっかりした仕事やれば、金はちゃんと払うよ!」
なんだかとってもカッコいい。
丁寧なんかではない。
でも一つ一つの言葉に優しさがある。
鯔背(イナセ)というか粋というか。。。
口先で適当なことを言う感じがまったくない。
職人気質なのだろうか。
そして、今朝(9日)
オープン10分前の
8時50分に鋏をお届けした。
「朝早くに、よく来たな~」
「なかなかいい仕事しているじゃないか!?」
「鋏研ぐ奴何人か知っているけど、上手いよ君は
おじさんも勿論、昔は研いでいたからね」
ひと安心
実は、美容師(私)の鋏と違って
一日の使用頻度がまったく違うので
刃先の損傷が結構大きかった。
そういった時、粗削りから始めるのがセオリーなのですが
そうすると、鋏が大きく削れて
咬み合わせがズレることがある。
なのでここは慎重に、バフ掛けに近い(艶出しに近い)
削れ具合の研ぎを繰り返した。
1本に擁した時間は2時間
2本で4時間近くは奮闘したと思う。
これでは商売にならない。
時間がかかるというのは技術力の無さでもある。
今の私には一生懸命持てる力を発揮して期待に応えるしかない。
いい加減なことをして
人さまの大切な鋏をダメにしてしまうわけにもいかない。
時間がかかったとしても。。。
何よりも、カッコいい「おじさん」の期待に応えられたことが嬉しい。
今は本業ではないのだから、儲けよりも信頼が第一。
改めて4本の鋏を託してくれた。
「無理すんなよ!」
「ガンバレよ!」
メンタル凹むどころか、凸。
こういう方との出会いが勇気をくれる。
元気をくれる。
本当にありがとうございます。
頑張ります。
こっちのカッコ良くない「おじさん」も。